2026年8月7日 米雇用統計(NFP)ティックデータ・インパクト分析
2026年8月7日(金)21:30 JSTに発表された7月の米雇用統計では、非農業部門雇用者数(NFP)が前月比2.3万人減となり、市場予想の4.1万人増を大きく下回りました。6月分も5.7万人増から2.0万人増へ下方修正され、平均時給は前月比0.1%増と予想を下回りました。
この記事では、OANDA MT5のティック履歴を使い、発表直後のUSDJPY・EURJPY・EURUSDの値動き、ティック密度、スプレッド拡大を分析します。さらに3通貨ペアを同一時刻で比較し、円高とドル安の寄与が時間とともにどう変化したかを検証します。
発表内容
| 指標 | 実績 | 市場予想 | 補足 |
|---|---|---|---|
| 非農業部門雇用者数(NFP) | −2.3万人 | +4.1万人 | 6月分は+5.7万人から+2.0万人へ下方修正 |
| 失業率 | 4.1% | 4.2% | 6月の4.2%から低下 |
| 平均時給(前月比) | +0.1% | +0.3% | 賃金の伸びは市場予想を下回った |
実績値と前月改定値は米労働統計局(BLS)の2026年7月Employment Situationで確認しています。市場予想は本分析の作成時に参照した値です。
結論:安値局面では円高寄与が大きく、USDJPYは5分弱で167.6pips下落
- USDJPY最大下落: 158.341から156.665へ−167.6pips。安値到達は発表4分53秒後の21:34:53
- USDJPY初動1秒: 発表前基準から−26.6pips。21:30:01の1秒内変化は−24.1pips
- EURUSD最大上昇: 1.15275から1.15807へ+53.2pips。到達は21:48
- ティック密度: 発表前約99件/分から、発表後5分平均724件/分へ約7.3倍。最大921件/分
- スプレッド瞬間最大: USDJPY 9.2pips、EURJPY 25.0pips、EURUSD 9.4pips。通常時の約20〜33倍
- 通貨要因の時間変化: 21:34:53の安値局面では円高寄与がドル安寄与を上回りましたが、60分後には円高の一部が戻り、ドル安寄与の方が大きく残りました
1. 3通貨ペアの反応比較

図はインタラクティブ表示です。線やバーにカーソルを合わせると各時点の値が表示されます(JavaScript無効時は静止画像を表示)。
発表前の21:29:59を基準にすると、60分後の変化率はUSDJPYが−0.59%、EURJPYが−0.22%、EURUSDが+0.37%でした。
EURJPY=EURUSD×USDJPYという関係から、USDJPYの変化率はおおむね「EURJPYの変化率 − EURUSDの変化率」で説明できます。60分後は−0.22% − 0.37% ≒ −0.59%となり、この時点ではドル安寄与約0.37%が円高寄与約0.22%を上回っています。一方、発表直後の安値局面では円高寄与の方が大きく、反応の主因は観測時点によって変わります。
2. USDJPYの初動60秒

発表約1秒後に大きな価格ギャップが発生しました。21:30:01の1秒間だけで−24.1pips、発表前基準から見ると同秒の終値は−26.6pipsです。15秒後までには発表前基準から−83.6pipsとなり、同秒内安値は157.505まで下落しました。
その後、21:30:15〜21:33はいったんもみ合いましたが、21:33:00〜21:34:53の第2波で約107pips下落し、156.665の安値を付けました。初動だけで終わらず、数分遅れて初動を上回る値幅の第2波が発生した点が今回の特徴です。
3. ティック密度

発表前のティック密度は約99件/分でした。21:30〜21:34の5分平均は約724件/分で、平常時の約7.3倍です。最大は21:34の921件/分でした。
赤い点は、フィードが約20件/秒の上限に到達した時間帯を示します。21:30と21:34〜21:36の計4分がこの飽和条件に該当しました。実際の気配更新はさらに多かった可能性があるため、飽和した区間の件数は下限値として解釈する必要があります。
発表後60分の総ティック数は24,809件で、発表前の平均密度を基準にすると平常時の約4.2倍です。最初の5分だけでなく、その後も高い更新頻度が続きました。
4. スプレッドの拡大

USDJPYの通常時スプレッドは約0.45pipsでした。発表を含む1分間では平均1.33pipsへ拡大し、21:30:03には瞬間最大9.2pipsを記録しました。瞬間最大はEURJPYが25.0pips、EURUSDが9.4pipsで、通常時の約20〜33倍です。
拡大は発表後だけではありません。発表1分前の21:29には、USDJPYの平均スプレッドが1.06pips、EURJPYが2.56pipsまで広がっていました。これは流動性供給側が発表前からリスクを抑えていた可能性と整合しますが、気配データだけで理由を特定することはできません。スプレッドはその後徐々に縮小し、約30分でおおむね平常水準に戻りました。
5. 時間軸別のインパクト
発表前の21:29:59を基準にした変化幅です。「イベント後の極値」は通貨ペアごとに到達時刻が異なります。
| 通貨ペア | 基準値 | +1秒 | +1分 | イベント後の極値 | +30分 | +60分 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| USDJPY | 158.341 | −26.6p | −60.0p | −167.6p(21:34:53) | −95.6p | −93.7p(−0.59%) |
| EURJPY | 182.527 | −3.2p | −11.0p | −122.8p(181.299、21:34:53) | −37.7p | −40.4p(−0.22%) |
| EURUSD | 1.15275 | +17.1p | +37.1p | +53.2p(21:48) | +45.1p | +42.4p(+0.37%) |
USDJPYは発表4分53秒後に安値を付け、その後60分で最大下落幅の約44%を戻しました。ただし、発表前基準と比べると60分後も93.7pips低い水準にあります。発表前の直近高値158.395(21:22)から安値156.665までの高安差は173.0pipsでした。
6. 通貨要因分解:安値局面では円高寄与が大きい
安値を付けた21:34:53の同期ティックを発表前基準と比べると、USDJPYは−1.058%、EURJPYは−0.673%、EURUSDは+0.369%でした。USDJPYの下落は、おおむね次の関係で説明できます。
USDJPY(−1.058%)≒ EURJPY(−0.673%)− EURUSD(+0.369%)
約0.02ポイントの残差には、各ペアのbid気配と数値の丸めによる近似差が含まれます。
ユーロを中立基準とする単純な分解では、USDJPYの下落に対する寄与はドル安が約0.37%、円高が約0.67%となり、安値局面では円高寄与がドル安寄与の約1.8倍でした。3通貨の強弱の合計をゼロとする最小二乗近似でも、円+0.58%、ドル−0.48%、ユーロ−0.10%となり、同じ順序です。
ただし、これは21:34:53という同一時刻の価格変化を表現したもので、実際にどの通貨ペアへ注文が入ったかを示すものではありません。EURJPY=EURUSD×USDJPYの恒等関係により、3ペアから得られる独立情報は実質2つです。通貨要因の数値は基準通貨や制約の置き方に依存し、価格データだけでは注文主体や実フローを識別できません。
弱い雇用指標が米金利低下観測を通じ、ドル売りだけでなく円ショートやキャリー取引の巻き戻しも促し、初動のUSDJPY下落を増幅した可能性があります。この解釈は安値局面の分解と整合しますが、ティックデータだけで因果関係を証明することはできません。60分後には円高寄与が約0.22%まで縮小する一方、ドル安寄与は約0.37%残っており、初動は円高寄与が大きく、その後はドル安寄与がより強く残ったと整理できます。
7. 前日の158円ブレイクとの関係
同じOANDAのティック記録では、前日8月6日23:05の158円上抜け局面で、USDJPYが157.91付近から158.55付近まで上昇しました。しかし約22時間後のNFPでブレイク起点を割り込み、156.665まで下落しました。結果として、前日の158円ブレイクは短期間で否定された形です。
価格は158円台後半〜160円の介入警戒が強まりやすい領域から一気に離れました。ただし、この値動きが実際の政策判断へどう影響するかは、価格データだけでは判断できません。
値動きの速度を比べると、7月30日の急落局面は最大1分下落が約83pips、今回のNFPは発表後最初の1分が60pips、5分弱の最大下落が168pipsでした。観測された値幅と速度は介入時を想起させる規模ですが、政策フローと経済指標への市場反応では発生要因が異なるため、単純な同一視はできません。
8. データ・再現条件と限界
- データ: OANDA MT5ティック履歴のサーバーサイド集計
- 集計単位: 1分・1秒バケット
- 価格: bidベース
- 基準値: 発表直前21:29:59の最終ティック
- pips換算: 円ペアは0.01円、EURUSDは0.0001ドル
- 時刻: すべて日本時間(JST)
- MT5サーバー時間: NYクローズ基準GMT+3(JST−6時間)
- フィード特性: 約20件/秒でコンフレーションされるため、飽和区間のティック数は下限値
グラフの線は各バケットの終値を結んでいます。注記した「分内安値」「秒内安値」は同じバケット内の瞬間値であり、線上の終値とは一致しない場合があります。時間軸別の表では通貨ペアごとに異なる時刻の極値も扱いますが、通貨要因分解には21:34:53の同期ティックだけを使用しています。
より多くの通貨を同一時刻で比較すれば、特定の基準通貨への依存を抑えた検証ができます。一方、対象通貨を増やしても、価格変化だけから注文主体を特定できないという限界は残ります。
作成: 2026年8月8日
本記事は市場データの記録・分析を目的としたもので、投資助言ではありません。






